桜井 竜太さん

元祖の味を守り続ける

 この店は創業60年で、私で三代目です。心がけているのは、おじいちゃん(初代)の味を継承していくことです。コシが強く、キャベツをのせた元祖の味を守り続け、今なお来てくれる常連さんに満足してもらいたいと日々努力しています。しかし、その日の気温や湿度、または季節で加減が変わるので、同じ分量でやっても同じ味を再現するのは簡単ではありません。毎朝、少しずつ調整しながら味が一定になるようにしていますが、本当に大変です。今は、なんとか経験で調整できるようになりましたが、それでも私の思い描くうどんのイメージとは、少しずれてしまいます。でも、そこが難しさでもあり楽しさでもありますね。イメージ通りのうどんができたときは、本当に嬉しいですね。

 吉田のうどんには「馬肉」っていう方は沢山いると思いますけど、うちでは一切考えていません。さっきも言ったとおり、おじいちゃんの味を守ることが一番大事だということと、今でも手が回らないのに他に意識がいってしまえば、大事な麺やつゆに影響が出てしまいます。そうならないように、現状のままでいくと決めています。ただ、お客さんが、きんぴらや天ぷらを持参することは構わないので、気を遣わず好きな形で食べてもらえればいいと思います。中には、キャベツ抜きとか油揚げ抜きとか言われることもありますが、それでもうちの麺が好きだからと言ってもらえるので、そこは自信を持ってやりたいなと。

 お客さんからよく「お店を大きくした方がいいんじゃない?」って言われることがありますが、その予定はありません。理由は簡単で、この店の「雰囲気」もある意味「うどんの味」だと考えているんです。改装してお洒落な店にしたら、今と同じ味にはならないと思います。この土間に座って食べることで、今の味がでると思うんですよね。だからこの店の雰囲気は絶対に壊したくないですね。また、よく値段が安すぎるって言われますが、これもなるべく変えたくないですね。正直厳しいですけど、常連さんの中には、1日に2回とか食べに来る人がいるんですよ。10時に来て、また昼過ぎに来る。そんなお客さんに支えられて今があるので、少しでも恩返しをしたいんですよ。

 うどん部さんへのアドバイスは、「吉田のうどん」の伝統的スタイルを大切にして欲しいと思います。バリエーションが増えることはいいと思うんですけど、文化としてのうどんを大切に守ることが一番大切だと思います。だからなんか、うどんの形が根本的に変わっちゃうような体制はあまりとってほしくないと思います。「吉田のうどんってなに」って言われたときに、昔から各家庭で作って食べた伝統のある食べ物なんだよって言えるように。うどんの本来のあるべき姿などを大事にしてもらえたらって個人的に思います。